令和2年 3月 定例会 『能登の暮らしとデザイン』
日 時 | 令和2年3月4日(水) |
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場 所 | 高岡市生涯学習センター 502号室 |
参加人数 | 21名(会員18名、賛助会員1名、会員外2名) |
セミナー
富山大学芸術文化学部 准教授 萩野紀一郎氏を講師にお迎えし、能登での里山暮らしとデザインについてご講演いただきました。
先生は大学時代に建築を学ばれ、アメリカへのあこがれから留学し、アメリカの建築を学びながら一時は永住も考えられたそうです。しかしある時、夏の休暇を過ごすために帰省した日本で、奥様の趣味である紙すきを通じて能登へ旅行したことがきっかけとなり、毎年の夏を能登で過ごすように。
そして帰国を契機に、能登への移住を決められたそうです。
能登では杉林を購入して自身で伐採し開拓から始まったこと、ほぼセルフビルドで家を建てられたことの体験談では、地形の起伏が激しく予定よりボリュームの大きな設計になってしまったことや、伐採した材木を使おうと保管しておいたものの、管理が難しくほとんど使えなかったことなど、思うように進まない苦労もたくさんあったと伺いましたが、それでも家族や友人と一緒に自分自身で家づくりをしたことがずっと楽しかった記憶として残っているということにセルフビルドの醍醐味を感じました。
また、実はそのご自宅の建築中に能登地震に見舞われ、工事を一時中断して、近隣の土蔵解体など地元の復旧に尽力されていたそうです。それもあって工事は大幅に遅れましたが、その時に参加した土蔵解体・修復作業の中ですっかり土壁に魅了され、土がライフワークとなったこと、土壁が自身の設計に欠かせないアイテムになったことから、土を絡めたリノベーションの施工事例をたくさん見せていただきました。土蔵の修復の仕方や版築の施工方法などもとても参考になりました。
土壁はインテリアとしても味わい深く、関心が一層高まりました。
さらに里山暮らしを外へ発信する活動にも活発に取り組んでおられ、ご近所の方と一緒に植物採集や研究をし、野菜作りなどのワークショップから、収穫した小豆や大豆を使ったスイーツ、しょうゆなどを企画や容器のデザインから携わって商品化して販売し、その売り上げを活動費に充てるといった 6次産業を超えたような活動も大変興味深い内容でした。地元の人を巻き込みながら新しいことにどんどん挑戦していく、能登の良さを発信し広めていくそのお姿に、深い能登愛を感じました。
その他、富山大学での講義では『実際に手を動かす』ことに重きを置いて指導されていることや、先生のライフワークとなっている『土』についてのお話しなど、定例会の時間枠に納まりきらないほど、盛りだくさんのお話しとなりました。
セミナーが終わった後も時間いっぱいギリギリまで先生を囲んで名刺交換が行われたり、質問が飛び交っていました。
( 南場 記 )